【完】こちら王宮学園生徒会執行部







──翌朝、午前9時。

昨夜いつみの部屋から帰った後、生徒会役員は全員帰宅させた。連絡するからと約束して、いつも通りに学校に行くように言ってある。



俺やいつみだけならまだしも、多数の人間が動いていることを知れば、南々瀬ちゃんが警戒するかもしれないと考えた結果だ。

そして現在、俺はふたりが住む階の、階段に身を潜めていた。



……マジで、見られたら通報されそうだけど。

通りかかった住人にはしれっと挨拶して誤魔化し、きょろきょろと周りを伺う。



彼女が訪れるのは、確実にいつみのいない時間だ。

つまりいつみが普段大学のために家を出る時間よりも後に来るわけで。……でもさすがにここに何時間もいられねえしな、とため息をついたとき。



「、」



エレベーターから出てきたのは、南々瀬ちゃんだった。

とっさに身を隠して、持っている鍵を差し込む彼女をこっそり盗み見る。



マジで通報されそうだな、これ。

しかも彼女が家に入ったタイミングで押しかけるんだけど、大丈夫かよ俺。




……てっきり家の鍵を貸してくれるんだと思ってたのに。

いつみは鍵を貸さないままどこかに出かけた、というか、朝6時に押しかけた時点で既に家にいなかった。



電話もつながらないし、どこにいるのかすら分からない。

……となれば、家に入る手段は使えないからと、この状況だ。



扉を開けて、部屋の中に入っていった南々瀬ちゃん。

早いうちに来てくれて良かったと思いつつ、彼女をとりあえず捕まえなければと、部屋に近づいてガチャッと扉を開ければ。



「っ、夕帆先輩、」



「ごめんな南々瀬ちゃん。

いつみに、逃がすなって言われてるんだよ」



はっと振り返った彼女。

中に入って扉を閉め、ご丁寧に鍵までかける。



「柴崎も一緒?」



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