【完】こちら王宮学園生徒会執行部
「でも、イチャイチャもしてるだろ?」
定期的に我が家に訪れる夕帆先輩。
気づけば自分専用のマグカップまで持ち込んでいる彼。みんなが来る前にわたしが淹れてあげたコーヒーを飲みながら、揶揄いの色を孕んだ瞳を向けてくる。
「そりゃまあ、付き合ってますから多少は……」
「……あー、ほんと南々瀬ちゃんはかわいいな」
「……またいくみさんと何かあったんですか」
夕帆先輩が入り浸ることに違和感がなくなってきているから、いつみ先輩がいない時に彼が遊びに来ても普通に家に入れてしまう。
それに、彼とわたしには付き合っている相手が珠王姉弟という、共通点がある。
ある意味、わたしと夕帆先輩のつながりは最強だ。
……まあいつみ先輩は、それに対しても随分不服そうだけど。
「それがな、」
夕帆先輩が、ふっと息をついて。
口を開こうとすれば、「邪魔すんなら帰ってくんない?」と夕陽がまた突っかかるように言葉を投げた。
……そんな言い方しなきゃいいのに。
でもまあ、今日は一応"歓迎会"だし、と彼もわたしも素直に口をつぐんだ。そのタイミングで。
「ななせ、準備できたよ」
ルアに声をかけられて、ハッとそちらに視線を向ける。
いつの間にか遊ぶことになっていたらしい。テーブルの上には、トランプやウノといったカードゲームが置かれていて。
「そんな人放っておいて遊ぼ、ナナ」
相変わらずの切り替えのはやさで、甘えるように擦り寄ってきた夕陽の言葉に、素直にうなずいた。
……今は余計なことを考える必要なんて、ない。