お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
「先生こそ、どうして此処に」


私を追ってきたの?
それとも自宅に忘れ物でもした?


多分後者だろうなぁ…と思いつつ返事を待つ。
口をへの字に曲げたドクターは、渋い表情で私の顔を見てたんだけど。



「ちょ…何すんですか!?」


いきなり指先で顎を掴み、ぐいっとそれを持ち上げる。
こっちは首の筋が突っ張って、それを緩和するかのように爪先立ちになった。



「泣いてたのか?」


驚いた顔で聞くもんだから困惑した。
ドクターに失恋したと分かって泣いてたなんて口が裂けても言えない。


「泣いてなんか」


強がって答えればドクターの顔は渋さを増して。


「嘘つくな。瞼が赤いぞ」


こんな時ばかり観察力を使ってどうする。


「泣いてたんだろ。何でだ」


「そんなの先生に答える必要ありですか!?」


トンと両腕を前に突いて押し離す。
怒った顔つきに変わる彼を目に入れ、先生には関係ないでしょ!と言い切った。


「私が泣いててもべつにいいじゃん。彼女でも何でもないんだし!」


そもそもどうして此処にいるんだ。
その質問に答えてよ。


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