お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
「…………」
何も言い返せなくて俯いた。
首筋も熱いからきっと薄っすら赤くなってるんじゃないだろうか。
(もう〜〜っ、反則だ。これ…)
それでなくても、ドクターに惹かれてると知ったところだったのに。
何も期待しないうちから壊れて、少し泣けば早く立ち直れると思ったのに。
(優しくされたら忘れるのも難しいよ……)
この間といい今日といい、ホントにタイミングの悪い時ばかり優しい。
普段通りに毒を吐いて、好きにしろと放っておかれる方が楽なのに__。
(苦しいよ……こんなことされると……)
本来なら女子が絶対にツイてると喜ぶ場面も今の私には胸がキュンとして切ない。
好きになってもダメなのに好きが増す。
このままずっと、彼の腕の中に居たいと思ってしまうくらいに胸が鳴る……。
ドキンドキン…と打ち続ける心音に耳を傾けたまま藤田外科病院の診察室に運ばれた。
非常灯だけが灯る室内の診療台の上に置かれたら……
「あー肩凝った!あんたもっと痩せろよ」
グサッとくるようなセリフを吐き捨てられ、ドクターは湿布湿布…と呟きながら探しだす。