お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
「バカ!暴れるな!」


耳元で怒鳴られビクつく。
振り向くとイケメンな顔が間近にあって__


「先生!」


どうして。


「足捻ったんだろ。歩き方見れば分かる」


「でも」


「無理して歩くな。手当てしてやるから来い」


…てゆーか、既に連れて行こうとしてるじゃない。


「大丈夫ですから!降ろして下さい!」


道行く人達の視線が思いきり恥ずかしいから。


「怪我人をほっとけるか」


それが初診時に毒を吐いた人の言うセリフ!?


「怪我と言っても軽いです!血だって出てないし!」


「ギャーギャー叫ぶな!耳が痛いっ!」


「それを言うならこっちもです!」


ドクターの視線はそう言う私の方に向けられる。数十センチしか離れてない距離で見るには、余りにも目ヂカラがあり過ぎる。


ドクン!と大きく心臓が脈打った。
そのままカァ…と頬が熱くなるのを感じた。



「静かにしてろよ。女子なんだろ」


少し声色を和らげて言うものだから益々顔が熱くなってきて___


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