お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
「ううん、何でもないの」


失恋は確定したな…と思いつつ午前中の仕事を終えた。

昼休みになり藤田外科病院へ行こうと部署を出たけど、捻挫の次は脛をケガしましたと言ったら、ドクターはどれだけ毒を吐くだろうかと考えると憂鬱で。



(また目が後ろに付いてるとか言われるのかな)


後ろじゃなくて無いんだろう?と言われそう。


(あーあ)


肩を落としてオフィスビルを出ると、今度こそゆっくりとしか歩けない歩調で進む。


そう言えば、エリナさん以外にもあの病院で会った女性がいたんだ。
診察代のことで忘れてたけど、あの人ってドクターとはどんな関係なんだろう。


(エリナさんが恋人なら、あの人こそ藤田くんのフィアンセ?)


ちょっと待ってよ。
そしたらあの女神像みたいな人が元カノってことになるんじゃん。


(元カノも今カノも美女ってどういうの!?)


どれだけ美女が好きなんだ。
勝ち目ないじゃん、私…。


(やっぱり告らなくて良かった。告ったら、それだけで一生笑い者にされそう)


今から病院へ行っても告らずにいよう。
口が滑らないように気を引き締めていかないと。


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