お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
病院へ着くと午前中の診療時間にはギリギリ間に合い、こんにちは…と声をかけると、受付の彼女は「あ…」と顔を上げた。


「川島さん、朝言われてた診察代の件なんですけど」


立ち上がりカルテを手にして話しかけてくる。
やっぱり書いてなかったのかと思ってたら、受付の人が話し出す前にドクターが診察室から出てきて……



「来たか。ちょっと来い」


怖い顔つきで言うもんだから、何!?と反抗して思った。
診察室に戻るドクターの後ろを追いかけて中に入ると、原さんがニコニコしながら出迎えてくれた。


「いらっしゃーい。待ってたわよー」


…って、待たれてもな。


「怪我したり捻挫したり忙しいわね」


「いえ、別にしたくてした訳でもないんですが…」


情けなく思い、朝のダッシュでパンパンに張ってる足首を少し引き摺りながら前に進む。
明らかに様子が変だと思われたのか、ドクターがジロリと睨み付けた。


「足をどうした」


「えっ、足?」


ぎくっと肩が上がりそう。
それを必死で隠し、何のことですか~?と聞いた。


「歩き方が変だろ」


「そうですか?元からこんな感じですよ」


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