お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
ドクターの運転する車はオフィスビルの前を通り過ぎて次の交差点を左折。

そこには赤い看板を掲げるパン屋さんがあって、メロンパンが美味しいといつも皆で話してる店だった。


「美味しいパン屋さんって此処ですか」


「なんだ。知ってるのか」


「知ってますよ~。職場の皆とたまに買いに来るし」


メロンパンが美味しいですよね…と言えば、それ以外にも旨い物があると言う。


「待ってろ。買ってきてやるから」


言うが早いかさっさと車を降りて行ってしまった。
ディスられたり気を遣われたり、ますますドクターの正体が掴めない。



(でも、総体的に言うならいい人なのか)


基本は優しいんだろうな。
口が悪いだけで。


(でないと子供もなつかないよね)


いつだったか額をケガした子供もドクターのことを気に入ってるみたいだった。
子供に好かれてるってことは、つまりきっといい人だと思う。



(単純すぎ…?)


そう思うけどまあいい。
自分の好きな人のことだから。


ドクターは店から出てくると運転席に座り、紙袋を放り投げるようにしてくれた。


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