お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
(ヤバい。鼻血出そう…)


ここで出したらギャグ以外の何物でもない。
とにかく気を引き締めて、変なことだけはしないでおこう。


ドキドキとしながら助手席のドアに手を掛け、滑り込むようにシートにお尻を下ろした……。



車内はシトラスミントの香りがしていた。
てっきり消毒薬のにおいでもしてるのかな…と構えてたから、意外にも庶民的でホッとする。



「昼食はまだなのか?」


シートベルトを締めると問われ、まだですけど…と答えた。


「でも、のんびり食べてる時間ないんで、良ければ途中のコンビニに寄って頂けると助かります」


休憩は後十五分くらい。
朝も遅刻してるし、昼からも…って訳にはいかない。


「コンビニよりも旨いパン屋に寄ってやる」


人のお願いなんて無視か。
まあドクターらしいと言えばそうだけど。


「すみません」


「やめろ。気色悪い」


あーのーねー、そういう言い方ってないでしょ!?


(ホントに優しさがないんだから)


行動は何かにつけて優しいのに…と車窓の景色を眺めて思った。

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