お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
ドッキーン!!


(で、出た〜〜っ!)


って、ユーレイじゃないんだから。


「あ…あの、川島、波南、です」


舌を噛みそうになり、思わず区切る。
ドクターは低めな声で「ああ」と呟き、間違いなく不機嫌そうな感じにビビった。



(ダメだ。やっぱり機嫌悪い…)


「す、すみません。電話が遅くなって」


ビクビクしながら残業してました…と言えば、ドクターは呆れた口調で、こんな時間までか!?と聞いた。


「どんなブラック企業だ」


告発してやる、と言うもんだから、それだけは勘弁して下さい!と訴えた。


「私の職場を奪わないで〜っ」


真剣に頼むと電話の向こうから、冗談だ、と言ってくる。


(先生が言うと、冗談も本気も区別がつかないよぉ〜!)


そう思っても口にすることすら出来ず。


「大変お待たせしたと思うんですが、ようやく退勤しようかと思って…」


迎えに来てくれますか?と聞いてもいいものかどうか。


「じゃあ今から家を出る。そっちの職場までなら五分程度で着くから」


「じゃあ…あの、荷物とか更衣室に取りに行くんで、十分後にビルの前で」


< 169 / 203 >

この作品をシェア

pagetop