お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
これだけ身構えさせるってことは、またしても毒を吐くつもりかな。

その前に釘を指しておく方がいいのかも……。


「先生…いきなり大声で罵るのだけはナシにして下さいね!?」


心臓に悪いから…と断った。
ドクターは笑みを浮かべてた顔を引き締め、徐ろに近付いてくる。

体温が寄ってくると胸が鳴る。
期待しても虚しいだけなのにやっぱりドキドキした。



「あのな」


囁くような声が聞こえる。
髪の隙間から息が吹きかかり、大きく心臓が跳ね上がった。



「俺はどうも……あんたのことが好きらしいんだ」


「は…?」


聞き間違えたかな。
期待し過ぎて幻聴でも聞いたのかも。


「あの…今何て?」


確かめたくて質問した。
だけど、ドクターは渋い表情で。


「一度しか言わねーと言っただろ!」


大きな声で怒鳴らないでよ。


「そう言わずにもう一度だけ言って下さい!」


お願い〜!と手を組んで願ったけど嫌だと言い張って聞かない。

なんて可愛くない男だ。あ、最初からか。



「何よ。もうケチぃ…」


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