お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
プン!と唇を突き出すと微笑んでくる。
その顔が優しそうでキュン…と胸が狭まった。


やっぱり私はドクターのことが好きだな。
失恋決定でも、さっきのが幻聴でもいいや。


「何をニヤついてるんだ」


あら、見てたのか。


「別に。先生のことを好きだなぁ…と思ってただけ」


あっさり暴露すると目が見開く。
鳩のように丸くなった目元が可笑しくて、唇の端を持ち上げた。



「波南!」


大きな声で呼び捨てられたかと思えば抱きしめられて、何が起こったのかと慌てた。


「ぎゃ〜〜っ!」


「煩い!」


「だけどぉ~」


ドクターに抱き付かれるなんてもはや現実とは思えない。

この後、一番ツキの無いことが起こるんだ。
きっとそうに違いない!



「俺も好きだ。波南」


抱きしめられたまま言い放たれた言葉に思考が止まる。


今のは幻聴?それとも幻?



「先生…?」


言い間違ってませんか?


「このところ、ずっとお前の顔が見えてないと気になって仕様がねーんだ。また何処かで怪我でもしてるんじゃないのかと思えて…」


「で、でも、さっきは…」


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