お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
「そう言えば、私に言っておきたいことって何だったんですか?」


暫く無言でいる最中に思い出した。
職場に送り届けられる時、彼にそう言われたんだ。


「ああ…それか」


ハンドルを操作するドクターは少しだけ苦笑する。
私はそんな彼の横顔を見て不思議そうに首を傾げた。


「あんまり気を揉ませんな、と言いたかったんだ。波南と関わってから気が気でねーことが多いから」


それも私に対する感情の正体が掴めなかったからだと話し、今はもうスッキリしたと笑った。


「それはつまり、私が幼馴染みたいな関係の人のことを『好きだったの?』と聞いたから分かったんですよね!?

先生はその人への気持ちを思い出して、それで私のことを好きだと知ったの!?」


鈍感過ぎない!?


そう思ったけど声には出さずに見守る。

私に注目されてる彼は照れくさそうに鼻の頭を掻き、まあそんなのどうでもいいだろ、と呟いた。


「どうでも良くありません!」


同級生のライン上では、ドクターが彼女を藤田くんに奪われたことになってるんだ。

そこの所をきちんと解明しておかないと、もしも何かで話題に上った時に困る。


< 187 / 203 >

この作品をシェア

pagetop