お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
絶対に手が届く筈のない相手だと思ってた人が私に恋してると言った。
イケメンで、ドクターで、美女が周りにいる人が__



「私……何も持ってませんよ?」


涙を拭いながら訊ねるとドクターはきゅっと私を抱き寄せ、そんなことはないと言いきった。


「十分魅力的で可愛い。元気が良くてドジな女だ」


「やっぱりディスってる〜!」


ヒドい、と言えば顎の下に指をあて……



「それくらい俺の気を引く要素を持ち合わせてるという意味だ」


熱っぽく囁くと唇の先が触れて目を閉じた。

優しくゆっくりと押し付けられるキスに、胸の鼓動は高鳴り、次に目を開けた瞬間は幸せな気分に包まれた。




「帰るぞ」


離れてくドクターの顔も赤い。
そんな彼に胸はやっぱり狭まる。



(先生……)


ううん、新さん……


頭の中で名前を呼んだ。
それだけなのに妙にテレて、暫く何も話せなかった____。




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