お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
誰にも渡したくない。
このままこの女を部屋に閉じ込めて幽閉生活を送らせてしまいたい。


(でも、それをしたら嫌われるだろうな)


俺は波南に好かれていたいんだ。
一途にずっと、俺だけを好きでいて欲しい。


腕の力を緩めると、ホッとした様な息を吐く。
そんな彼女の顎から頰を包んで、近付きながらこう言った。



「……誰にもやらないから覚悟しろ」


幼い頃好きだった女の子は弟しか見てくれなかった。
でも、こいつは俺のことを見つめている。



「新さ…」


囁くような声すらも自分のものにしたくて、唇を寄せ付けた。
何度も舌や唇に吸い付いては混ざり合う唾液すらも吸って__



「離さない。今夜はずっと俺のものにしておく」


囁くと波南の目は蕩けたように潤んでいる……。


「……そうして」


ぎゅっと腕を背中に回されるともどかしさが募り過ぎてしまった。


「ひゃっ!」


足を掬い上げると驚いた波南の声が上がる。
俺はそれに満足したように笑いかけ、そのまま自宅へと向かった。


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