お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
受診に来た時既に受付の人は院内におらず、原さんも帰ってしまった後だった。


「つくづくあんたの趣味は時間外診療だな」


医者をこき使いやがって…とボヤく彼には何も言い返せず。


「申し訳ありません(だけど、それを趣味にはしてませんよ)」


ショボくれて謝ったのに、止せ、気持ち悪い…と返された。


(何よ!その言い方!)


こっちが下手に出てやってるのにエラそうにしないで。診療代を払うのは私なんだぞ〜!


そう心の中で息巻いたがドクターに伝わる訳もない。


「傷の方はまだ腫れてるな。それにしても綺麗な縫い目だ」


じっと見てほくそ笑んでる。
やっぱりサドだと呆れ、どうでもいいけど早く済ませて…と祈った。


処置が済んだら死んだケータイ持ってショップに行くつもりだった。
出来るだけ早く交換して貰おうと目論んでて、それが出来なかったら困るなぁと考えてた。


昨日に引き続き、ドクターと二人だけの診察室はシーンとしてる。
処置音だけが響いていて、何も言わないでいると緊張が高まってくる。



「あの〜」


「何だ」


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