お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
傷の上から薬を塗ってるドクターは目も向けず、私は次の言葉を言うべきかどうか迷った。


「……今日、誰が包帯を巻いてくれるんですか?」


迷いながらも訊ねると、ドクターは目を見開いたまま顔を上げ__


「…あ、そうか」


どうやらその作業は頭の中に無かったっぽい。
巻かなくてもいいんじゃね?とこの人なら言い出しそうだ。


「しまったなぁ。解くんじゃなかった」


それが医者の言うセリフか。


「うーん、マズい。どうするか」


知らないよ。


頭の中でツッコミを入れると、おっ!と思い出したような声を発して。


「あいつに頼もう」


そう言うと急に安心したのか、意気揚々と続きを再開。
こっちには説明もナシなのかい!と更にツッコミたくなってると丸椅子を動かして足元に置いた。


「これの上に足を置いて」


今日は診察台に寝なくてもいいんですね〜、とちょっとだけ嬉しくなった。

イケメンドクターの目の前で台の上に横たわる自分を想像すると、まるで好きにして♡と言ってるようで、照れてしまってどうしようもなかったから。


< 32 / 203 >

この作品をシェア

pagetop