お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
ドクターの別の顔
出社すると皆は私の足を見て呆れ、柑奈はお腹を抱えて笑いだした。

打ち身の後は切り傷、その次は火傷か…と村田さんは怖い顔をして呟き、もうそれ以上傷を増やさないように!と言い渡してきた。


「この間プレゼンした商品の製造が始まるのに担当者の波南がそんな状態でどーするの!?」


製造元にも足を運ばなきゃいけなくなるのに…と小言を言われ、面目無いとしか言いようもなく。


「今日からは気を引き締めて生活します!」


そうは言ってもツキの無さが災いしてる。

トイレに入ればペーパーが無いとか、社食に行けば釣り銭が出てこないとか、その日も一日中ずっとツキから見放されて過ごし、部屋に帰れば帰ったでこんなメッセが届いた。



『波南聞いた?』

『藤田君のお兄さんて』

『市民病院の外科医だったらしいよ』

『エリートだったらしくて』

『オペもバリバリこなしてたって』


『ウッソー!』


だったらどうして今は開業医をやってるの?と送ればそこにはこんな理由があったらしい。


『当時の恋人と別れたのが原因だって』

『外科部長の娘が恋人だったらしいよ』

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