お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
どんな表情してるのかなと気になり、包帯を巻いてくれる原さんの背中越しにいるドクターのことをチラチラと眺めた。



「はい、終わりましたよ」


診察台の上に乗せてた足に包帯を巻き終わった原さんに声をかけられ、ありがとうございますとお礼を言った。


「次は金曜日にお越し下さい。それまでに包帯が取れたらいつでも巻き直しに来ていいですからね」


自分で出来そうならやってと言われ、はい、と答えながらスリッパを履く。
ドクターにもお礼を言って出るべきかな…と思いながら脇をすり抜け、振り返って彼を見てみれば__



(ええーっ、うそぉー!)


メチャクチャいい顔して笑ってんじゃん!
最初から少し垂れ目な目元がかなり下がって、蕩けたような表情をしてる。

目尻に寄ったシワも、口角の上がった唇も彼を人良さそうに見せてる。…しかも、何よ、あの言葉遣いの優しいこと。


「ちょっとチカッとするけど我慢な。エライぞ〜」


…って、私の時とは雲泥の差なんですけどぉ!?


今のこの光景は目の錯覚!?
そうでなければ幻か何か?


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