お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
やっぱりドクターは、恋人にはちゃんと笑いかけてあげれるんだ。
甘い言葉も囁けて、私の脈を測ったあの手で優しく触れることだってする。

患者の私には無遠慮だとしても、恋人にはきっと、遠慮がちに触れるに違いない。



どんな風に触るんだろう。
どんな甘い言葉を掛けるんだろう。

表情はどんな?
キスの仕方はどう?


悶々…と考え込んでしまってイヤになる。
これじゃまるで自分がドクターを意識してるみたい。


(やめやめ。考えても仕方ない)


ブンブンと頭を横に振ると診察室に呼ばれた。
返事をして入ると、そこに居たのは弟の藤田くんだった………。




「おはよう」


爽やかな笑顔で挨拶され、こっちは面食らう。

考えてみればこの部屋にドクターがいる訳はない。さっきの美女と二人で何処かへ行くのを見たんだ。


「どうかした?川島さん」


不思議がる藤田くんに椅子を勧められながら、ううんと返事をして「おはよう」と挨拶した。

ドクターは?と聞くのも妙な話だな…と思ってたら、彼の方から説明があった。


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