お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
「兄さんはちょっと来客中でね」


「あ…そうなんだ」


「直ぐに来ると思うけど、それまで俺がピンチヒッター」


先に足の火傷を見ようかと言われた。
原さんが動かしてきた椅子の上に足を乗せて包帯を取ると、藤田くんはガーゼも取られた患部を見て。


「順調そうだね。火傷も乾いてきてるし、このまま今の軟膏を塗っておいたらいいよ」


そう言うとカルテを見つめ、次は右手の傷を見ようかと言う。
原さんは手際良く四角い治療台を持ってきて横に置いた。
その上に手を乗せて包帯を取られているとドクターがやって来て__。


「悪い、靖。話は済んだから」


バサッと白衣を羽織って手を洗う。
藤田くんはデスクから離れ、私の足は順調そうだよと説明した。


「これから右手を見ようかと思ってたところ」


「ああ、今日は抜糸なんだ」


手を拭くとアルコールを吹き付けてる。
それを揉み込むと診察用の椅子に腰掛け、ジロッと私を睨んだ。


「…ど、どうも」


先日はお世話になりましたと言おうかとしたけど、ドクターの目は直ぐに縫い傷の方に移ってしまい__。


< 88 / 203 >

この作品をシェア

pagetop