お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
(それに、お世話になったのにお礼もしてない)


病院に行った時もドクターからその話はするなと言われてしまったもんだから、お礼も何も言えなかった。

酒代はきっと彼が支払ってる筈なのに、このまま無視しておくのもなんだし……。


「波南?」


不思議そうにする村田さん。
彼女に目を向け、何でもありません、と誤魔化した。


「仕事しましょう!仕事!」


「私はここに休憩しにきたのよ」


コーヒーを淹れに来たと話す彼女に、すみませーん!と笑い飛ばしながら謝った。

紙で切った指にカットバンを巻いて貰いつつ、昼休みになったら病院へ行き酒代を支払っておこうと決めた。


そう思うと何だか急に張り合いが戻ってきて、その後はサクサクと仕事が捗った。

何でだろうと思いながらも少しだけ嬉しい気持ちが心の隅に湧いていた__。


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