お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
多分相当飲んでた筈だ。
元々ザルで飲み過ぎてもあそこまで酔ったりしないから。


何を言われても耐えようと決めて病院へと近付いた。
階段を上がってもドアは開かず、よく見れば休診の張り紙がしてある。


【臨時休診のお知らせ】



「うっそぉー、折角来たのに」


紙を見ながら叫べば、今日と明日は休診となってる。
早く言ってよーと嘆きつつ、仕様がないか…と帰りがけた。


そこへ駐車場から車から出てきた。
何気なく見遣ると乗ったことがある車体に似ていて、ドキッと胸が弾んだ。



「あ…」


もしかしてドクター?

そう思って見てたら、助手席にはあの美人が座ってて__



「…………」


呆然としてる間に出て行ってしまった。
過ぎ去ってく車体に胸が痛み、同時に言いようのない寂しさを感じた。


ドクターの横顔は笑ってはないけど微笑んで見えた。
唇の端が上がってたから、きっと何かしら喜んでたんだと思う。



何よぉ…と思い出しながら腹が立ち、デートするから休むの?と呆れた。


「患者よりも恋人が大切ってこと!?」


人には時間外診療させるなとか言ってたくせに!?


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