お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
「スケべだぁ」


そう言いながらもムカムカしてくる。
自分の思う通りにならないからって怒ることでもないのに。


「やめよ。酒代なんて払わなくてもいいや」


請求もしてこないし。
そう思いながら、ひょっとしてあのバーでツケられてるのかもしれないとも考えた。


あの場にドクターがいたから、マスターが代わりに支払ってと言ったかなと思ったんだけど。


「そうよね、人の酒代を知り合いに支払ってとは言わないか」


慌てて来て損した…と思いつつコンビニへ向かう。

出掛けに詰めた指先が痛い…とこぼし、手を握りしめたまま肩を落として歩いた。




退社前、柑奈に飲みに行かない?と誘った。
一人でバーへ行くのも楽しくないと思ったから。


「ごめーん、今日は金欠なんだー」


日曜日に新作のコートを買ったらお金がなくなってしまったそうだ。
今度またねと断られ、代わりに先輩達を誘う気にもならず__。


「仕様がないか」


酒代を払うだけなんだから一人でもいいかと思い、トボトボと駅へ向かう。

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