九魂猫骨董品店
「人間も、誰もいない暗い闇に落とされたらたった数日で狂ってしまいますわ。
そんな中で蛇神様は何十年…
いや何百年と待っておられましたの。
でも、そんな死の山に誰が近づきましょう?
人は愚か全ての生き物は近寄らぬまま、物忘ノ神は忘れ去られていきましたの。
そして、蛇神様は忘れ去られ力を蓄えられずに、山で死んでいった全ての生き物の怨念に飲み込まれましたわ…
その白く美しかった姿は、その闇に飲まれたかのように黒く、牙は鋭く長く、変貌していきました。
瞳はまるで…あの日、山を、森を、そして人を飲み込んだ炎の様に更に赤くなりましたわ。
そして、また月日が経ち街ではこう囁かれますの…
あの山には邪神がいる、山に入ったものは自分が何者かもわからずに狂い死ぬ…と…
そして、様々なものがその邪神、蛇神様を退治しようと向かいましたの。
だけど、誰一人として適う訳ありませんわ。
なぜなら相手は神!
力は弱くなり、闇に落ちた邪神ですわ。
穏やかな心も闇の奥底…
手遅れだったのですわ。」
そこで私は口を開いた。
「だが、ある日突然に…」
無意識に近い意識の中で、言葉が流れ落ちた…
自分で驚いていると
「お客様は蛇神様に気に入られたのですわねぇ…私以外と話すのは初めてですわ。」
店主はそう言って穏やかに笑う。
その目線の先には、私の手の中の彫刻。
蛇神様、が、この彫刻に?
「ロウソクの火も丁度よろしいですわ。ほら、もう蛇神様の口元まで…後少しだけ、お付き合いくださいまし…」