気付けば、君の腕の中。


「例えば、今日1回でも桃の顔を見た?」

「うーん…見たとは思うんだけど、はっきり思い出せなくて…」


凜くんに欠落していたのは、“誰かを愛す”ことだったのだ。

きっと、それなりの事情を抱えて、今までを生きてきたはずだから、恋愛が何か分からないのだろう。


だから彼女を優先してあげられず、色んなすれ違いを重ねて、恋愛に恐怖を持つようになってしまった…のかな、とあたしは考えた。



「女の子はね、付き合ってる人に優先されたいと思うんだ。
些細なことでもいいから、距離を縮めたり…」

「…なるほど?」

「だから、その…桃と手を繋いで家まで送ってあげて?」

「うん、分かった」


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