気付けば、君の腕の中。


目の前にいる彼は、あたしと五十嵐くんに視線を向けて、そっと逸らした。

…やっぱり、話しかけてくれないよね。

もう一度歩き出そうと、足を動かせたそのときだった。


隣にいた五十嵐くんがあたしの腕を掴んで、そのまま引っ張る。

その動きがあまりにも自然すぎて、あたしはされるがままだった。


普段は眠そうな瞳をしている彼は、しっかりとあたしを見つめていた。


彼の唇があたしに近づいてきたため、ピシリと体が固まった。


え、ええ……!?!?


あと少しで触れてしまう前に、五十嵐くんの胸板を押そうと手に力をこめようとした。


「……ざまあみろ」


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