気付けば、君の腕の中。


泣くのを堪えて、あたしは頷いた。

もしかしたらあたしは、心のどこかで二人を「応援」することで、この恋を諦めることが出来るのだと思っていたのかも知れない。


「……桃に、酷いことしちゃったよ」

「恋なんて…、簡単じゃないことばかりだわ。だから落ち込んでる場合じゃないわよ」

「うん…、必ず仲直りしてみせるから、だからそうしたら」

「“偉いね”って褒めるわよ」



凜くんに“ずっと友達でいてくれる?”って言われた、あの冬の日。

あたしが奈々美の家に泊まったとき、奈々美に「あたし頑張るから、そうしたら偉いねって言ってくれる?」と訊ねたのだ。


その約束を―、奈々美はちゃんと覚えていてくれた。


「ありがとう…、奈々美。あたし、頑張るね」

「ええ、応援しているわ」


窓の景色を眺めて、思い切り息を吸い込む。

お姉ちゃんに会うまで―、あと少しだ。


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