気付けば、君の腕の中。


途中で転んだ白くんは無傷だった。

泥だらけになりながら「へへっ、かった!」と喜ぶ姿を見て、楽しんでくれていることが分かった。


『五十嵐陽菜ちゃんのバトンが、ついに兄に手渡されました!!
ほぼ互角ですずちゃんのバトンが、白組、坂木くんの手に渡ります!』


「あ…、二人とも速いなあ……」


かなり真剣なのか、余裕がなさそうな表情で、どんどん障害を乗り越えていく二人。

スタートの位置についた奈々美は、深呼吸を繰り返して、桃と顔を見合わせていた。


あたしのお父さんとお母さんは、少しだけ距離を縮めて、何か会話を交わす。

内心ひやひやしながら見守っていると、清水さんの実況が響いた。


『五十嵐くんのほうが少し速い!! 今のところ赤組が一位です!』


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