雨の降る世界で私が愛したのは
その日は天気のいい日で、雨は風に混ざってしまうほど細かかった。
久しぶりの天気に傘をさしていない人も多かった。
挨拶するために一凛は電話で教えてもらった事務所に向かう。
対応してくれたのは年配の男性で、今はその人が園長をしているらしかった。
調査させてもらう日程とスケジュールはまた後日改めて連絡がくるということでその日は挨拶だけして事務所を出た。
依吹の動物園は超現代風の動物園とまではいかないが、昔からあるわりには手入れがほどこされ、そこそこに新しい取り組みが行われているように見えた。
一凛の足が自然と早足になる。
十年経ってもそこへの道順はしっかりと覚えていた。
はやる気持ちと不安が混ざりあう。
まだあの檻は同じところにあるだろうか、そしてハルはそこにいるだろうか。
園の奥に進むにつれて景色は昔と同じままで、それは懐かしさより一凛の気持ちを重くさせた。