雨の降る世界で私が愛したのは


 待ち合わせだと店員に伝え二人席のテーブルに腰かける。

 女性の一人客はほとんどおらず、餃子を食べながらビールを飲んだり、ラーメンをすする男性の一人客が多かった。

 こんなところで食事をするということは依吹はまだ独身なんだろうか。

 それにしても十年ぶりに再会するというのに、別に何を期待するわけでもないが、もう少し見映えのいい店を選んでくれてもいいような気もする。

 それともよほどお金がないのだろうか。

 依吹の動物園は経営難のようには見えなかったが。

 一凛は店で食事をする男性たちをそっと観察する。

 ネクタイをゆるめビールで顔を赤くしたサラリーマンやポロシャツにチノパンで電話をいじる男性、何を期待しているわけではないが、いわゆる羽振りの良さそうな男性は一人もいなかった。

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