雨の降る世界で私が愛したのは
一凛は横で黙ってほのかが話すのを聞いていた。
女を全面に押し出しだようなほのかは昔から特に男性に勘違いされることが多く簡単に落とせそうだと言い寄ってくる男がたくさんいた。
だが一凛は一度もほのかがその誘いに乗ったのをみたことはない。
昔から彼氏を取っ替え引っ替えのほのかだったが、一凛はほのかが誰よりもロマンチストなのを知っている。
ほのかが欲しているものは、『運命の純愛』それ以外ないのだ。
「それに一凛」
いきなりほのかに指差され一凛は驚いて「はい」と小さな声で応える。
「あんたも妻持ちの男なんかに誘われてないで、独り身の男をちゃんと捕まえなさいよ。依吹とはどうなってるの?会ってるんでしょ」
「へえーまだ依吹と続いてるんだ」
颯太は無表情で言った。
「いや、依吹とはそういうのじゃ」
一凛は口ごもる。
ほのかは睨むように一凛を見ていたがまた顔をテーブルに突っ伏した。