雨の降る世界で私が愛したのは


 ハルは新しい檻ですぐにメスたちの異変に気づいた。

 それはとてもわずかな違いであったが人間には分からなくても同じゴリラのハルには異質な匂いとして感じ取ることができた。

 それがスタッフの男の一人が持ってくる食べ物に原因があるということもすぐに分かった。

 その男は動物園が閉園したあと通常の食事以外のものを持ってやってくる。

 いつもゴリラたちの好物の甘い果物ばかりだった。

 ハルがその男の持ってくる果物を口にするどころかその男に近づこうともしなかったのはその男から発せられる異臭のせいだった。

 それはメスのゴリラの体から臭うものと同じだった。

 微々たる匂いのメスのゴリラたちと比べその男の匂いは強烈だった。

 男の臓器という臓器がすべて腐りそれを薬品づけにしたような匂いだった。

 その匂いを色にしたような淀んだ目をその男はしていた。

 
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