雨の降る世界で私が愛したのは
動物園だけではない。
どちらが人間にとって都合のいい話か?
たとえ世間に真実を訴えたところで、世間はそれをそのまま素直に受け入れるだろうか?
否。
世間は認めないだろう。
なぜなら人がゴリラよりも劣っているはずがないからだ。
その逆はあってもゴリラが人を裁くなどということがあってはならないのだ。
人にとって都合の悪い真実は闇に葬りさらなければならない。
人対人であったら戦うこともできるだろう。
だがハルは人ではない。
ハルは人がねつ造した真実を背負わされ、何重もの鍵のかかった厚い扉の奥に閉じ込められている。
その声は誰にも届かない。
一凛は彼女の横に一緒にひざまずいた。
「わたしをハルのところに連れて行って」
彼女は一凛の手を強く握り返しうなずいた。