雨の降る世界で私が愛したのは
「ハルがナンバーワンで俺はナンバーツーか」
「そんなナンワーワンとかツーとか」
「だってそうだろ?」
遠くで雷の轟く音が聞こえた。
一凛は窓に顔を寄せてアパートの二階を見上げた。
「じゃあ、わたし行くから」
今度こそ車の外に出ようとする一凛を依吹は呼び止める。
「分かったよ、分かった」
一凛は振りかえる。
「いきなり全部を受け入れるのは無理かも知れないけど努力はする。だって」
依吹は微笑んだ。
「この人支配の世の中じゃハルには一凛を守りきれないだろ」
「依吹」
「なんだよそんな顔して」
「ありがとう」
一凛があまりにも嬉しそうな顔をするので、依吹は照れたようにプイッと顔を背けた。
チケットの手配ができたらすぐにまた連絡を取り合う約束をすると一凛は車から降りてアパートの方へ走って行く。
階段の下で一度振り返ると軽く手を振った。