雨の降る世界で私が愛したのは


 そしてどのチャンネルも一凛については何も言わない。

 それどころかハルを助けた人間の存在さえいないかのような話しぶりだった。

 警察はあのアパートを突き止めたのだ。

 一凛がハルの脱走に携わった証拠は充分に得ることができるはずなのに。

 一凛を逮捕するまで公にしないつもりなのか。

 寝室の外で物音が聞こえた。

 依吹が帰ってきたようだった。

「一凛起きてるか?入るぞ」

 依吹よりも早く扉を開けたのは一凛だった。

「ハルは?」

 依吹は一凛をそしてその肩越しに見えるテレビ画面に視線を向けまた一凛に戻す。

「依吹、今ハルはどこにいるの?依吹には警察から連絡が来てるでしょ。ハルは大丈夫なの?」

 依吹は目を細めた。

「ハルはうちの動物園にいる。大丈夫どこも怪我なんかしてないし元気にしてる」

 一凛は表情を弛ませた。

「ねえハルに会いたい、ハルに会わせて」






< 293 / 361 >

この作品をシェア

pagetop