雨の降る世界で私が愛したのは
「ねえねえ一凛ちゃん、今度のバレンタインやっぱり依吹くんにチョコあげるの?」
耳元で囁かれ一凛はくすぐったくて首をすくめた。
「ほのかちゃんは誰にあげるの?」
そう答えてそれでは依吹にチョコをあげると返事をしているようなものだと気づきすぐに訂正する。
「あげないよ、チョコはお父さんだけ」
ふーんと、ほのかはちょっとつまらなさそうな顔をしたがすぐに「わたしはね」と顔を紅潮させた。
ほのかの口にした大河くんというのは一凛の知らない男子で、誰かと訊ねると三組のクラスの子だと言う。
前にクラス対抗のドッジボールをした時に見て好きになったのだそうだ。
「本命チョコは大河くんだけど、同じクラスの男子の何人かにもチョコ配るよ。あと隣の家のお兄ちゃんとバスの運転手さんにも。とりあえず普段お世話になってる男の人には全部義理チョコ配るんだ」
「すごいね、ほのかちゃん」