雨の降る世界で私が愛したのは


 その日ハルはいつものように檻の中で一番見晴らしの良いところで空を見上げていた。

 白い雲は形を変えながら流れていく。

 視界の端で何かが動いた。

 顔を向けると少女が立ってこちらを見ている。

 ハルは引き寄せられるように少女に近づいた。

 長い黒い髪を腰まで垂らし大きな瞳は恐れもせずハルをまっすぐに見上げている。

 小さな口が動いて何かを言った。

 三つのその音を聞いた時ハルの目から熱いものがこぼれ落ちた。

 少女はそれを見ると哀しそうにまばたきを繰り返した。




「イチカ」

 一凛ははっきりとゆっくり自分の名前を声に出す。

 わたしの名前は一凛。

 あなたは?

「どうして泣くの?」

 一凛は檻の中に訊ねる。

 大粒の涙がゴリラの頬の黒い毛を濡らした。



 そしてまた始まる。




 終


 *ご愛読ありがとうございました。  八月美咲


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