雨の降る世界で私が愛したのは
ハルをジャグルから運んだ男たちとも髭を蓄えた男とも違う種類の人間が食べ物を運んで来たり何かとハルに話しかけるようになった。
その度にハルは牙を剥き唾を人間に吐きかけた。
そのうち意味の分からない事を言ってくる者は誰もいなくなり、食事と最低限の世話をされるだけでハルは放置された。
孤独でいることはハルにとって心地良いことだった。
檻の中から青い空を見つめ風を体で感じる。
さほど高くない空にある太陽がハルの黒い毛をじりじりと焼いた。
木の枝に止まったカラスが檻の中をのぞき込んでいる。
りんごの破片を投げつけるとカァーと声をあげて飛んで行った。
自分は死ぬまでここにいることになるだろう。
ハルは思った。
それでいいと思った。
ハルを襲っていた残影は今では殆ど現れることもなくなった。
緩やかに流れる平穏な時間の中でハルは全てを忘れていった。