雨の降る世界で私が愛したのは
「ニンゲンと同じ、する」
一凛は立ち止まった。
「何をするって?」
カラスと本気で会話してはいけないと思いながらも訊かずにはいられなかった。
カラスは黒い、でもあのゴリラのような深みはないガラス玉の目をキョロキョロさせるだけで黙っている。
「ねえ、彼が何をするって?」
「バーカ」
カラスはそう言い放つと灰色の空を飛んでいってしまった。
思わず石を投げつけてやりたくなった。
やはりカラスとまともに会話してもろくなことがない。
でもカラスの言ったことは気になる。
カラスはいつもあんな感じで人間を小馬鹿にしているが、嘘はつかないのだ。