気付いて、届いて
「目、閉じて」

彼女は黙ったまま、目を閉じる。

受け入れられたのか。

無人駅の片隅で、小さな彼女の肩を抱く。
少し屈んで、腰を引き寄せ、本日3度目の口付け。

ぎゅっと、俺の服のハシを掴んだ手。

今度は震えないでしっかりしている。




人もまばらな帰りの電車、俺たちの車両には誰もいない。

行きの電車のときより、距離が縮んだ気がした。

腕と腕が自然と、触れ合った。


「…付き合って、くれる?」


こくん、と彼女は小さく頷いた。
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