【短】イノセント


「…あの…さ…。…本気?」

「…え?」

「さっきの…ほんとに、本気?」


勿論、彼があんなことを冗談で口にするわけがないっていうのは、今までの付き合いからも知っていたけど。

たった一言で、こんなにも舞い上がって、一人動揺してるあたしには…きちんと確認しておきたいことだから。

じっと遥か上にある彼のことを見つめれば、ふっと口元を緩ませて彼が両手を伸ばしてきた。


「……っ…い、ぬい…ッ」


風に当たって、鼻先まで冷たくなってるあたしの頬に。


息を飲んでしまうほど温かな手が触れて…そのままさっき以上の至近距離で彼が囁く。


「…本気じゃなきゃ、オレだってこんな風にはならない……長野が、好きだよ」


するりと手から鞄が落ちて…胸が…きゅうっと苦しくなった。

そして、それよりもっともっと下の…お腹の下辺りがどきんとしてくる…。


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