【短】イノセント


心地良いはずなのに、何処か窮屈な時間。


卸し立ての制服みたいな…その感覚に、息が詰まるような気さえしてしまう。


早く、脱ぎたい。
でも…どうしたら…?


真っ直ぐ前を向いて隣を歩く彼に…この想いをどうやって伝えればいいの…。


あまりにも、急過ぎて頭の中と心が逸れてしまったみたい。


だけど、このまま伝えないわけにはいかない。
彼の想いを素直に受け止めて…あたしも自分を解放したいから。



「…いぬい…」

「…ん?」


学校のすぐ近くにあるバス停が少しだけ見えてきた所で。


一瞬「このまま別れてしまうのは淋しい」と思ったのをきっかけに。

あたしは、彼よりも一歩だけ先に踏み出して…彼の方を向いた。


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