【短】イノセント


「…もう、離さないから…覚悟してて?」

「……ん」


いつものように真面目な顔をして。


確率がどうとか…理屈がどうとか…。
そんなことでこの想いを片付けてしまわない貴方が…こんなにも愛しいから。


「…もっと、言って。…あたしが好きって、もっともっと…」


確率なんて浮かばないくらい、予測不可能な愛で溺れさせて。


そうしたら。


一秒毎に貴方でいっぱいになって、様々に形を変えてくあたしの全部を…。
貴方へと惜しみなく明け渡してしまうから。


「好きだ。長野しか、いらない…」


彼から与えられる全てに、溶け出してく怯えてた心。

甘く痺れるような時間。

さっきまでの窮屈な時間を飲み込んで、あたしの身体に大きな波になって波紋を広げてく。


貴方のレンズ越しの瞳には、何もかも見透かされているようで。


ずっと、居た堪れなかった。
ずっと、どうにかして欲しかった。


だから…ねぇ…。


ドキドキして、何処までも昂ぶっていくこの窮屈な想いを。


早く脱がして。
貴方が解き放って…。


「大好き…」



初めてだから、限度を知らない恋。



でもね、今はそれでいい。
他の誰かと比べるようなことじゃない、から…。








Fin.
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