トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
最初に会ったときは近寄りがたくて、もっと怖い人に見えていた気がする。


篤さんの中性的な横顔は、話している印象よりも繊細そうに見える。眼鏡のフレーム越しでも大きな瞳の存在感は変わらず、少し目を伏せた様子はアンニュイな雰囲気だ。


篤さんが運転中なのを良いことに横顔を眺めていたら、


「着いたよ。


急にまじまじと顔を見て、どうしたの?」


と苦笑された。気付かれていたと思うと恥ずかしい。


「前見てるから、わかないかなと思ってました。」


「見惚れたな?」


わざとらしく格好つけた篤さんだけど、その通りですと伝えると、きっと照れるんだろうなと思う。


「あはは。」


「何だよ、笑うなよー。

ほら、行くよ。」


トランクから取り出したバッグを一瞥すると、念を押すように目を合わせ、私に手渡す。


「夏だし、金魚観に行こう。」


「金魚? お祭りか何かですか?」


「見ればわかるよ。」


篤さんが私の手をとって歩き出す。


距離が近付くと、また涼しげな香りがした。いつも使う香水なんだろうか。私はきっとこの香りを覚えてしまっている。


大きくて、少し体温の低いその手をそっと握り返して目線を上げると、優しい笑顔の篤さんと視線が交差した。
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