トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
「そう。目が潤んで、息も荒くて、その唇は誘ってるようにしか見えないよ。


俺が瑞希ちゃんの彼氏なら、その顔は誰にも見せたくないかな。」




そんな顔をしているのだろうか。私がいやらしい顔をしていたから、兄は目を背けたくなったのだろうか。


呼吸を整えて、もう一度髪の乱れを直した。


兄のことついて不安は尽きないけれど、もうひとつ不思議なのは……



「あの、篤さん。何で私にさっきみたいなことしたんですか?」


「可愛いから、からかいたくなったんだよ」


「そんな、私なんか……

それに篤さんは兄の友達なんですよね。

その兄がこの部屋に戻ってくることが分かってるなら、普通は妹の私に……あんなことしないかなと思って。」


たどたどしく言葉を続ける私を、篤さんは優しい顔で待っていてくれる。


「だから本当は、兄を怒らせるのがあなたの目的のような気がして……」


「深く考えすぎだよ。」
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