トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
「ごめん!さっきは悪かった」
帰宅後に顔の前で手を合わせた兄は、すっかりいつもの兄だった。
目の前に置かれたコーヒーの薫りも手伝って、帰宅中の刺々しさが嘘のように消えていく。
「私、まだ何も説明できてなかったね」
そう言いながらも、何をどう伝えていいのか全くわからない。
「しなくていい。というか、できれば何も言わないでくれ。
あんまり妹の恋愛事情なんて生々しく知りたくないしな。」
兄は困ったように、誤魔化すように笑う。
何を言っているの?
何か決定的に勘違いをされている気がする。
「でも、保護者代わりとしてこれだけは言わせて貰うけど。
初対面の相手に、あんなことするなんて無防備にもほどがある。たとえ好きになった相手でも、だ。」
「違う!全然、違うの」