トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
「違うって……好きでもない相手にあんなことされて、瑞希は平気なのか?」


悲しげに言う兄。いつものことだけれど、少しも私の気持ちを理解していない。


「平気じゃなかったよ。

そんなの……お兄ちゃんこそ、あの女優さんにベタベタして」



「あれは全然違うだろ。仕事だ」



「オイシイ仕事で良かったね!


私あんなお兄ちゃんの顔見たことなかった。演技にはとても見えなくて、苦しくて」



こんなこと言いたくないのに。言葉にすると想いが勝手に溢れてくる。



「でも、目が離せなかった。

見たくないけど、もっとずっと見ていたかった。」



これでは殆ど告白しているみたいだ。知らない間に、また顔が赤くなっている。
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