トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
「あいつなら、瑞希を傷つけることはないと知ってたから。

瑞希が一人で泣いているくらいなら、篤の隣にいる方がマシだ。」


「お兄ちゃんだって私のこと傷つけたりしないのは同じじゃない。

ずっと理想を演じてただけだとしても、私に優しかったのは本当だもん。」


「でも篤の方が、……というか俺なんかとは比べるまでもなく、優しくて強い奴だから。

客観的に見れば、どちらが瑞希に相応しいかなんて明白で」


兄の言葉に妙な引っ掛かりを感じた。
……私も前に、似たようなことを言った気がする。


「そうだね。

篤さんて優しいし格好よくて、人としても尊敬できるし。あんな素敵な人、女の子ならみんな好きになっちゃうよ。

それにお兄ちゃんと同い年とは思えないほど大人だし、良い香りがして、気遣いが濃やかで……」


「待って。

少し黙って。俺のダメージを少しくらいは考えて。」



兄に口を手で塞がれながら、私は以前に篤さんが言った言葉を思い出していた。

『周りから見て正しいとか正しくないとか、重要なこと?

君と俺との関係なんだから、人として間違ってるとかどうでも良くない?』


篤さん、私もそう思うよ。



「でも。

客観的に見て相応しいかどうかなんてどうでも良いよ。それは私が決めるの。

私とお兄ちゃんの関係は、他の誰かの尺度なんて必要ないんだよ。二人だけのものなんだから。


…………大事な人がそう教えてくれたの。


私は、お兄ちゃんがどうしようもない駄目な人だったとしても、弱くて嫉妬深くても、お兄ちゃんがいいよ。

自分で醜いと思ってるところを全部見せて。私が受け止めるから。」
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