トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
少しだけ遅い夕食は、ペンションのマスターが従業員の人を集めて、兄の送別会が開かれた。みんなで食卓を囲んで、賑やかな時間が流れる。


「藤堂くんとはね、前に仕事でここに来てから、仲良くさせて貰ってたんだよ。

急にモデルさん辞めるって言うからびっくりしたけど、料理までこんなに旨いんだもんなぁ。

天は二物を与えずなんて嘘だ。ずるいよ。」


「マスターが料理を教えてくれたから、やっと少しできるようになってきただけで。


感謝しています。無理を言ったのに、急に居場所を作ってくれたことも。」



お酒を飲んで顔を赤くしているマスターのおじさんに、兄は生真面目にお礼を言っている。


テーブルに所狭しと並べられた沖縄の料理はどれもとても美味しくて。


家で兄が作っていたのは繊細で華やかなものが多かったから、今日の家庭的なメニューは意外だったけど、少しだけ柔らかくなった兄の表情とはよく合っていた。


「いつでもうちの看板ボーイに帰ってきてくれていいから。」


看板ボーイ?


それって看板娘みたいなものかな。


「確かに、それは女の客が増えるからうちの経営的にオイシイっすね。藤堂サン仕事中すげー写真撮られてたし。」


私と同年代くらいの従業員の人が続けた。


「そうそう、そのギャルソンエプロン姿、辞める前に撮っていい? うちのサイトに載っけて女性客を集めようよ。」


「良いねー!

物憂げな感じで酒持ってかっこつけたポーズしてくれない? キザなやつ。」


「やりませんよっ。だいたい、そんな写真はこの店の雰囲気にも合わないでしょう。」
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